(講演レポート)市民公開講座「うつ病の治療法を考える −当事者、家族が求めるもの」
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私もあなたと同じく、どんよりした気分でした。歩き方をほんの少し変えるまで…
■Q1. ゆううつを自分で脱したい? Yes・No
2006年7月28日、日本うつ病学会、JCPDTの合同主催による市民公開講座「うつ病の治療法を考える −当事者、家族が求めるもの」が新宿京王プラザホテルにて開催されました。<開催要項>
当日は梅雨明け直前の蒸し暑さの中、最善のうつ病治療法を学ぼうと、数百人もの参加者が会場につめかけました。3講演者の講演はいずれも個性的で、中高年の夫婦がめだった会場内からは、ドッと笑いが巻き起こる場面もしばしば見られました。
今回のレポートでは、講演およびスライドの内容を適宜編集の上、皆様にお伝えします。当日の雰囲気が少しでも伝われば幸いです。講座は毎年開かれているので、興味を持たれた方はぜひ来年の講演にお申し込みください。
講演1
「やまない雨はない、妻の死、うつ病、それから…」
気象エッセイスト 倉嶋 厚さん(うつ病体験者)
1997年、私は最愛の妻をガンで亡くしました。入院して3週間で亡くなってしまい、私はショックでうつ病になりました。新聞も読まず、テレビも見ず、体重は64kgあったものが47kgまで減り、鏡を見るとまるでガイコツ。食事は味がなくまるで消しゴムを噛むようで、字も書けず、脱力感のあまり靴下や下着もつけられない状態でした。
もう生き甲斐がないから死のうと思い、マンションの9階にある自宅の窓から下を眺める毎日を送りました。7階から落ちたのでは死ねないと知り、1997年の12月、14階に当たる屋上へ2週間通いました。その様子を見ていたお手伝いさんが「これは危ない」と思い、私を精神神経科へ連れていき、その後入院させたのです。4ヶ月の入院生活を経てその後退院し、今に至っています。
はじめは「うつ病と雄々しく戦おう」と思ったのですが、できませんでした。朝日新聞や読売新聞などでコラムを書く仕事を少しずつ断るたびに敗北感を感じていました。でもある時から、もう、みんなにおまかせしちゃうことにしたんです。すると楽になりましたね。
入院は閉鎖病棟でしたが、これが最低のレベルで、これ以上落ちないと思ったらなんだか安心しました。自殺を図るようになったら、入院がいいと思いますね。すべてを管理され、薬も管理されました。入院するまでは頭の薬だからこわくて、もらった薬を時々飲んでいなかったのですが、病院では必ず飲ませられます。薬はいいですよ、結局私は1997年から2003年まで6年間飲みました。最後は医者がだんだん減らしたのですが、「薬をやめましょうか」と言われてびっくりしました。一生飲む気だったんです。
問題は、立ち直る時にあります。うつ病患者に抽象的な「がんばれ」は良くないけれど、回復するときはいつかがんばらないといけない。回復のきっかけは私の場合、文藝春秋の読者応募コーナーに、妻を亡くした体験記を投稿したことでした。老人性うつ病の三大症状は"自分を責める""お金の心配をする""病気の心配をする"ですが、私は妻に十分なことをしてやれなかったとずっと後悔し、自分を責めていたんですね。でも体験記を書いているうちに、妻も不幸でなかったし、私も精一杯やったと思えるようになった。やったことがきちんと見えるようになってきたんです。
周囲は抽象的に「がんばれ」と言うのではなく、何かを具体的に提供するのがいいですね。そして周りは褒めてあげる。共感が鉄則です。「あなたの悲しみは、○○さんに比べたら何でもない」とか、悲しみくらべを周りから言うのはよくないですね。私の悲しみはあの人よりマシだ、と認識するのは自分ですから。
立ち直る時の最初の一歩はがんばりが必要だけど、焦ってはいけない。私は落ちこむこともあったけど、人の愛語で励まされてきました。その人に合うような具体的な愛語、思いやりの言葉をかけてあげてほしい。それが回復の第一歩になると思います。
9年前14階の屋上に通ったとき、もし飛び降りていたら、今日講演している自分はありませんでした。死んだらゼロです。生きていれば、必ず人生は展開します。マイナスの人生でも、プラスになるチャンスが来ます。ですから、死んではいけません。
講演2
「うつ病の治療法:精神療法の立場から」
慶應義塾大学保健管理センター 教授 大野 裕先生
私は精神療法者の立場から、言葉を通じて治療する重要性をお話ししたいと思います。
まずはうつ病になるメカニズムを説明します。ストレスが重なると、脳が次第に機能不全を起こし、ものの見方が否定的になってきます。すると自信を喪失し、ストレスがとても大きく思え、まわりのサポートが役立たないと感じるようになってしまいます。すると脳がさらに機能不全状態に陥り、悪循環が発生していきます。
治療のポイントは、ストレスをやわらげる「環境調整」、脳の機能不全に働きかける「薬物療法」、否定的なものの見方を修正する「精神療法」の3つで、このうちどれが欠けても不十分です。
うつに対処する精神療法の一つ、「認知療法」は、考え方を変えてみようというアプローチです。そのためにはとにかく書くことが重要です。
認知療法の書き方の一例を、ウルトラマンを例にお示ししましょう。例えばウルトラマンがバルタン星人と闘って、三分間の時間切れになって負けたとします。その時ウルトラマンはショックを受け、「なんてダメなウルトラマンなんだ!」「ヒーローなのにもう終わりだ」と感じたとします。このとき、紙に状況をできるだけ客観的に書いて、ショックの大きさに自分なりの点数(例えば95点)をつけ、感じたことを率直に書きます。ここで紙をもう一度読んで、ちょっと冷静になって考えてみるのです。すると、「たった一回の失敗でダメだなんて決められない」し、「ウルトラの母やタロウを呼んで一緒に闘えばいい、自分で全部できるわけじゃない」し、もっと考えれば、「また来週がある!」ことが見えてきます。先のことが見えるとかなり楽になりますから、ショックの大きさがどうなったか、もう一度点数をつけてみるといいでしょう。
このように、ちょっと別の面から物事を見る力をどう育てていくか、これが精神療法の趣旨です。専門家に教わるだけではなく、周りの人の力を借りながら自分自身でやっていくこともできます。(注1)
講演3
「うつ病の薬と身体療法:どこまで進んだか」
防衛医科大学校精神科学講座 教授 野村 総一郎先生
今回の講演では、事実を正確にお伝えするつもりです。うつ病の薬にはまだまだ誤解がありますが、抗うつ薬には依存性はなく、麻薬とは全く違います。また薬で気持ちが変わるのではなく、薬でうつ病が治った結果、気持ちが変わるわけです。副作用はありますが、ふらふらになったりはしませんし、睡眠薬と違いクセになったりもしません。治ったらすぐやめるべきというわけでもなく、すぐやめるとうつ病再発率が高くなるので、しばらくは続けて飲んだ方がいいです。
しかし抗うつ薬には弱点もあります。どの薬も有効率は7割程度で、吐き気・便秘など副作用はたくさんあり、しかもすぐに出ます。にもかかわらず薬の効果には即効性がなく、若い人は逆にイライラするケースも多い。薬を急に止めると不安などが出ることもあるし、妊娠に対しても影響します。つまり、飲みごこちは良くないけれど、4週間飲んでみると7割の人には効くので、飲んでみてください、というのが実情です。
薬物療法は、上手な医者とそうでない医者がいます。薬物療法が上手な医者の特徴を以下に挙げます。下手な医者はこの反対です。
・標準治療を知っている(注2)
・薬の副作用とその対策も知っている
・薬の種類を少なく抑えようとする
・複数の薬を出す場合、理由をきちんと説明できる
・薬のチョコ出しはせず、必要十分な量を処方する
・飲みごこちをいつも聞いてくる
なかなか治りにくい難治性うつ病の治療には、薬の増量、ホルモン療法の併用、通電療法や診断の見直しなどが必要になってきます。うち通電療法は即効性があるため、重症で自殺の可能性が高い場合や、薬が効かない時、薬の副作用が強く出てしまい薬が使えない時に用いられます。通電療法がよく効くのは、パーソナリティがうつに絡んでいない場合や、躁うつ病・大うつ病の典型例、精神病像・興奮錯乱などを示すうつ病、あるいはパーキンソン病を合併しているケースです。
(佐藤未果)
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注1 認知療法には専用のワークブックが市販されているほか、患者向けの解説書も多数出版されている。
注2 日本での標準治療は「精神科薬物療法研究会(JPAP)」により、治療アルゴリズムとして明確に定められている。例えば大うつ病の現在の標準治療はこちら(うつ病ドリルの過去記事内、下図)
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■うつ病の治療法を考える
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体内時計がずれてるからかも…?
| | 2006年08月18日 09:06 | | トラックバック歓迎 (0) |
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